ジョン・ロングの「シェイクスピアの音楽理論」に基くシェイクスピアの「テンペスト」の戯曲・音楽構造の一分析(その2)
2.本分析の意義
周知の通り、シェイクスピアと彼の作品である「テンペスト」の研究論文はかなりの数にのぼり、中でもいくつかの論文はその音楽性を指摘しながら戯曲構造に迫っているが、どれひとつとしてシェイクスピアの音楽使用例を応用して構築した理論はない。さらに、「テンペスト」を実際に舞台でプロデュースする際に、同作品をデザインする舞台音響家たちへ効果的な指標として提供していない。文学性を重視した論評の中には少なからず、音楽を題材にして理論構築を試みるものもあるが、どの批評にしても舞台音響デザイナーの目から書かれたものはない。以上の根拠から本分析を展開していく意義は明らかであり、文学性重視の戯曲研究を本来の「舞台で実際にプロデュースする」という領域まで広げて論説する点においてもさらなる意義を有する。
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