本文へスキップ

ジョン・ロングの「シェイクスピアの音楽理論」から見たシェイクスピアの「テンペスト」その4 とも英語塾 府中

とも英語塾 府中 ドラマHEADLINE

とも英語塾 府中 ドラマ 論文(日本語)

ジョン・ロングの「シェイクスピアの音楽理論」に基くシェイクスピアの「テンペスト」の戯曲・音楽構造の一分析(その4)

4.ジョン・ロングの理論と研究範囲の限定

ジョン・ロングの理論

ジョン・ロング著の「シェイクスピアの音楽の使用について」は当論文が理論を展開するうえで参照する資料の根幹を成すものである。彼の研究テーマはシェイクスピアの数ある戯曲において音楽がどのような機能をもっているかを系統だてて説明することである。彼の著書である「シェイクスピアの音楽の使用について」の冒頭では次のように書かれている。

「シェイクスピアの戯曲の中で奏でられる音楽の機能を理論として確立することを目標にする。必要とあらば、演奏形態、当初の楽譜を検証して音楽使用の重要性を枚挙する一方で戯曲の解釈、台詞の構造、ステージのデザイン、上演史などに関わる問題と戯曲中で音楽が使用されるシーンの関連性を提議する。つまりはシェイクスピアの舞台芸術家としての素養を振り返りたいのだ。」

ロングの議論は戯曲中の音楽使用をその機能面から洗い出していくので、「テンペスト」の音楽構造を明らかにするためには格好のテンプレートである。今までにも、ロングの理論をもとに上演当初の「テンペスト」において音楽がどのように使われていたのかを論ずるシェイクスピア研究者は少なくない。なぜなら、ロングはエリザベス朝とジェイコビアン朝の音楽研究に精通しており、研究範囲は「テンペスト」だけでなくその他の17のシェイクスピア戯曲に及んでいる。同著書の最大の特色としては理論を一通り説明すると、次に各シーンにおいての説明が展開されていることである。したがって、戯曲が持つ聴覚的芸術性を深めるという点から考察すると、音響デザイナーがロングの理論をシアターで実践に移すことができるようにセットアップされていると言えよう。ロングの「テンペスト」における音楽構造の分析を応用しながら、当論文はシェイクスピアが音楽を使ってドラマのアクションを芸術的に高めている事例を取り上げる。その過程においてロングが掲げる次の三つの質問に対する答えを出していく。

  1. 音楽がムードを盛り上げているのはどこ?
  2. 音楽はどんな種類の象徴的意味を表しているのか?
  3. 音楽はどのように自然界に存在しない生物を登場させているか?

研究範囲の限定

当論文の主要な目的のひとつにはシェイクスピアのテンペストをその文学性から分析するのではなく、同戯曲の音響を担当するデザイナーの目からそのドラマ性と芸術性を探るものである。音楽の機能と質については可能な限り、音響デザイナーとしての議論を展開していく。

ロング著のテンペストにおける音楽構造の分析においては六つの問題が定義されているが、当論文では上記の三つの質問に限定する。限定することで内容の濃い議論を展開したいのは言うまでもないが、最大の理由は上記の質問が音響デザインの研究分野に直結しているからである。雷鳴や渚の音といったいわゆる音響効果というものよりも音楽と歌に焦点をおいていく。今日録音されている効果音のライブラリーはほとんどのものがその特殊性を欠いており、一般的な条件を満たすにとどまっている。一般的な議論は学術研究分野においては危険であり、その結論はしごく一般的になりがちである。したがって、当論文からは一般的な音響効果音を話す機会は最小限にとどめる。

次へ ひとつ前へ戻る