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英国エリザベス朝及びジェコビアン朝における政治、社会、経済、宗教、文化の発展がウィリアム・シェイクスピアの戯曲に与えたインパクトの概略(その15)

15. エリザベス女王とシェイクスピア

エリザベス女王の君臨した期間のイギリスでは国家として特筆すべき、さまざまな達成があったので、イギリス研究者のほとんどが彼女をイギリス史上最高のリーダーであるとしている。例えば、船で世界一周を達成したフランシス・ドレイクや北極圏を探検したマーティン・フロビッシャー、さらにはアメリカ大陸の植民地化政策の原動力になったウオルター・ローリーなどは大航海時代の代名詞であり、エリザベス時代に活躍した探険家たちである。他にもイギリス文学の黄金時代を築いた劇作家ウイリアム・シェイクスピアはもちろん、詩人のエドモンド・スペンサーなど枚挙に暇が無い。しかしながら、ヨーロッパ諸国においてイギリスという地位を磐石にしたのはエリザベスその人なのである。

彼女が王位に就いた1588年、国際社会から見たイギリスは貧しい離れ小島の感があり、強大なスペイン帝国の支配下に、いつ落ちてもおかしくない状況だった。ブラッディー・メリーで知られる、前女王メリーの時代は極端なカソリック優先主義によるプロテスタント迫害で政治的混乱が多発したことから、国民の支持が薄く、国家としての安定感は皆無であった。エリザベスが即位後ただちにカソリックとプロテスタントのどちらも認めて、国家の安定をはかったことでイギリスは次第に国力をつけていった。そんな折の1588年、スペインのフィリップ二世はイギリスに侵攻する目的で、当時最強と言われた艦隊をイギリス周辺海域に送り込んできた。スパニッシュ・アーマーダである。ところが、勝ち目が無いと言われていたイギリス艦隊が見事にスペインを破ったことで、イギリスは国際政治と国内経済の両面で、さらに大きく発展するチャンスをつかんだのだ。

エリザベス女王を間接的に賞賛する目論見で、1595年から1600年にかけて書かれたシェイクスピア喜劇には女性の登場人物に対して、従来より大きな力を与えているフェミニスト的立場が見られる。例えば、「お気に召すまま」のロザリンドは婚約者であるオーランドを遊び心いっぱいで叱責するし、「空騒ぎ」の第一幕では、主人公ベネディクトと大恋愛するビアトリスは「心の底からあなたが好きなので、私に言い寄ってくる男たちの甘い言葉を聞くより、カラスにむかって吼える犬の声を聞いていたほうがまし。」などと男性を中傷する台詞を堂々と言わせている。確認すべきことは、この時代には女性軽視はごく普通で、女性がステージに立つことは許されず、女性役は全て男性あるいは少年が演じていたという点である。にもかかわらず、シェイクスピアは作品中で有能で知的な女性像を際立たせているのである。

反対に、「空騒ぎ」はフェミニスト作品ではないという理由のひとつに、ヒーローはクロウディオとの結婚を受け入れたという点がある。クロウディオはライバルの罠にかかって、ヒーローに似た女性が見知らぬ男と逢引きをしている現場を目撃してしまう。結婚式当日、婚約者が浮気したと思い込みをしてしまったクロウディオはヒーローとの結婚を怒りに任せて破談にしてしまう。最終的に、二人は復縁するのであるが、フェミニストの立場としては、そんなに辛い目にあわされたのになぜというのが本当の所である。ところが、ヒーローが決して無力でなく、困難に打ち勝ち、より大きな愛で婚約者の過ちを受け入れたという点において、女性の立場をさらに強いものとしているのは間違いない。このように、シェイクスピアは戯曲中の女性の立場を際立たせることで、エリザベス女王への賞賛を積極的に発信していたのである。

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